豪州最大の都市と言えば人口400万のシドニーだが、この場合の人口は、シドニー市をはじめ40余の市が含まれる「シドニー都市圏」の人口。
「シドニー市」自体の区域は「シティ」と呼ばれる業務地区の6平方キロだけなので、居住する住民の数は2万5千人に過ぎない。
これはメルボルンなど他の州都でも同様だが、例外はブリスベーン市。市の面積は1000平方キロ以上、市だけの人口で80万を超え、単独の市人口としては豪州で断トツだ(二位は、ゴールドコースト市の38万人)。
規模が大きいだけに海外都市との交流も盛んで、99年2月に同市が主催した「アジア太平洋都市サミット」には、世界16か国の40以上の都市が参加した。その中には、姉妹都市である神戸市、94・98年に同様の都市サミットを開催した福岡市、QLD州と姉妹提携している大阪府や埼玉県の代表の姿もあり、日本での顔の広さを物語っていた。
そんなブリスベーンの幅広い「ジャパニーズ・コネクション」の中でも、習志野市との結びつきはユニークだ。
そもそも両市の縁を取り持ったのは「渡り鳥」だった。埋立や開発で手付かずの自然がほとんど消えた東京湾岸にあって、習志野市に残された「谷津干潟」は、大都会では稀少な野鳥生息地。
水鳥だけでも約60種類を観察できるが、ここに飛来するシギ類やチドリ類の多くは、はるばる2万5千キロの旅をして、ブリスベーンの湿地帯にも渡っている。谷津干潟を経由して、シベリアと豪州とを往復するものもあるそうだ。習志野市では、この壮大な生態系を支える貴重な干潟をラムサール条約の「国際的に重要な湿地」として登録し、保全に全力を挙げている。
一方、広大な市域内に7千haに及ぶ湿地、3万ha以上のブッシュランド(自然林)を擁するブリスベーンも、自然保護に意欲的に取り組んでいる。例えば、ブリスベーン市民は、固定資産税の一部として「ブッシュランド税」を納めており、年間400万ドルの税収は、湿地や自然林の買上げなどの財源に充てられている。
そんな共通点がある両市の関係者が出会ったのは、96年3月にブリスベーンで開催されたラムサール条約会議でのこと。渡り鳥の縁から持ち上がった「湿地提携」の構想に双方とも大いに賛同し、98年2月、両市長が調印して提携が正式に成立した。ブリスベーンでの調印式には習志野市民訪問団も出席し、同年6月の「谷津干潟の日」には、今度はブリスベーンの使節団が習志野を訪れ、ディジャリドゥーの演奏を披露したりした。
両市の湿地保全事業に共通しているのは、多くの市民ボランティアが協力していることだ。習志野でもブリスベーンでも、自然や野鳥の専門家ばかりでなく、写真、絵画、音楽といった様々な分野の人々が保全活動にかかわっている。99年2月には、谷津干潟自然観察センターの市民ボランティアたちがブリスベーンのブーンダル湿地やチンチ・タンバ湿地を訪問し、現地のボランティアと意見や情報を交換した。
国境を知らない鳥たちが引き合わせた両市の提携は、国境を越えた市民同士の交流へと発展しつつある。こうした草の根交流の輪の広がりが、地球環境問題への対応の大きな足掛かりになるのではないだろうか。 |